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グノシー編集部

2023-11-09
© iconic SPORTS AGENCY Inc.
【取材・文=塩畑大輔】

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2023年11月5日、茨城県で開催された米女子ツアー・TOTOジャパンクラシック最終日。
18番グリーン周辺にいた観衆が、雪崩を打つようにして一斉に動き出した。

スタッフの誘導のもと、列をなしていく。
その数は数百人に達していただろう。

来た!と歓声が上がった。
ラウンドを終えた西村優菜が、笑顔で列に歩みよる。

「一日応援してくれてありがとうね」

先頭にいた少女に声をかけて、サインを始める。
飛び跳ねて喜ぶ様子に目を細めながら、次に並んでいるファンにも丁寧にお礼の言葉を伝える。

ファンサービスはたっぷり数十分は続いた。
疲れた様子もみせず、最後まで笑顔でやりきった。

© iconic SPORTS AGENCY Inc.

「本当にたくさん来てくださったので、一緒に楽しんでもらえたらと思ってプレーしていました」

首位と6打差で出たこの日は、序盤につまずいた。
3番パー3で、第1打を池に入れてダブルボギー。逆転優勝は早々に難しくなってしまった。

それでも、そこからスコアを5つ伸ばし返した。
バーディーパットのたびに、観衆から「入れ!」と大合唱が起きる。アーティストのライブで発生するファンとの掛け合いのようだった。

サインをしながらみんなに伝えた感謝の言葉。
それは「一緒に楽しんでもらえてありがとう」という心からのものだった。

同行のチームスタッフも含めて「みんなで楽しむ」。
西村優菜が多くのファンから支持されるゆえんだ。

だがそんな彼女が「誰にも会いたくない」と心を閉ざした日があった。
遠い昔の話ではない。ほんの3か月前のことだ。

 
嵐のラウンド。空を切ったクラブ
 

その日、西村優菜はホテルからいなくなった。

8月のアイルランド北部は、連日天気が悪かった。
この日も灰色の雲が垂れ込め、夏場とは思えない冷たい雨風が吹き荒れていた。

用がないなら、とても外に出る気にはならない。
なのに彼女は、どこかに姿を消してしまった。

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